多くの動物病院で「電話対応の多さ」が課題になっています。予約の問い合わせ、診療時間の確認、緊急の連絡など、電話は飼い主と病院をつなぐ大切な手段ではあるものの、スタッフの業務を圧迫し、診療や受付対応に支障をきたすことも少なくありません。この記事では、なぜ動物病院では電話対応がなかなか減らないのか、その背景を整理したうえで、実際に電話対応を減らすことに成功した方法をご紹介します。電話対応が減らない3つの理由1. 飼い主の“安心感”としての電話依存ペットの体調に不安があるとき、飼い主は「すぐに確認したい」「調べた情報が合っているか聞きたい」という気持ちになります。ネットで情報が得られる時代でも、“直接聞く”という手段は安心感があります。特に高齢の飼い主にとっては、電話は一番なじみのある手段であり、アプリやウェブ予約にハードルを感じることも多いのです。2. 情報がウェブサイトや予約画面で見つけにくい電話で聞かれる内容の多くは「診療時間」「休診日」「予約の有無」「空き状況」など、実はウェブサイトに記載されている基本情報です。しかし、情報の掲載場所が分かりにくい・更新されていないなどの理由で、結局「直接聞いた方が早い」となってしまいます。3. 予約システムの利用方法が分かりにくい予約システムを導入していても、「どうやって予約するか分からない」「アプリのダウンロードが必要だった」「会員登録が面倒だった」などの理由で、結局電話に頼ってしまうケースもあります。つまり、“使われない予約システム”では電話の代替にはなりません。実際に電話対応を削減できた方法とは?では、どうすれば動物病院の電話対応は減らせるのでしょうか。以下は、実際に改善が見られた対策の一例です。1. 情報発信の強化と整理電話でよくある質問を洗い出し、「よくあるご質問」ページとして病院のホームページにまとめることで、電話の前に確認してもらえる状況を作りました。さらに、診療時間・予約方法・対応できる症例などをトップページや予約ページに見やすく表示するように改善。また、InstagramやLINE公式アカウント、DM発送などを活用し、休診情報や混雑状況、繁忙期のご案内などを定期的に発信することで、問い合わせの抑制にもつながりました。2. 予約方法の選択肢を見直す「アプリ予約」「会員登録型のWeb予約」では、予約を完了するまでの手順が多く電話対応を減らすことができないため、ゲスト予約やLINE連携予約など、使いやすさを重視した複数の予約手段を導入。それぞれのメリットをスタッフが説明し、患者さまに合った手段を案内するようにしたことで、電話より予約システムを使う人が増加しました。ー実際の予約システムの導入事例兵庫県にある神戸灘動物病院では、以前は電話予約のみを受け付けており、受付スタッフだけでなく獣医師の手もたびたび止まる状況が続いていました。ときには診療内容の確認や不安の相談で、長時間の電話対応になることも多かったそうです。そこで導入されたのが、LINE連携が可能な予約システム「Wonder」でした。「今までは電話予約のみを受け付けていたため、その度に獣医師の手が取られ、内容によっては長時間になる電話もありました。予約システムのWonderを導入してからは、予約導線が普段使っているLINEからなので患者さまの予約のハードルを下げることができたため、電話対応を削減することができました。」― 神戸灘動物病院 後藤充 院長このように、患者さまにとって“使いやすい”予約手段を導入することが、結果的に病院全体の業務効率化につながる事例です。3. スタッフの案内方法を統一受付スタッフが患者さまに予約方法を案内するとき、伝える内容や表現がまちまちだと、患者さまが混乱し、結局「電話の方が分かりやすい」となってしまいます。そこで、予約導線を周知するためのスタッフ用の案内マニュアルを用意し、伝え方を統一することで、窓口での説明がわかりやすくなり、リピート予約は自動化されていきました。4. 院内での「予約文化」を育てる最初は電話中心だった患者さまでも、2〜3回スムーズにネット予約を体験すると、「次もネットで大丈夫」と感じるようになります。そのため、ネット予約をした患者さまには「今後もネットでの予約が可能です」と伝えたり、リマインドメールを活用して継続利用を促しました。まとめ:電話を減らすには“仕組み”と“説明”の両立が鍵動物病院で電話対応が減らない背景には、「患者さまの不安」「情報不足」「操作の難しさ」など、さまざまな要因があります。そのため、単に予約システムを導入するだけではなく、“情報をきちんと伝える仕組み”と、“それを活用してもらうための丁寧な説明”が必要です。電話対応の時間が減れば、スタッフは本来の業務に集中でき、患者さまへのサービスの質も高まります。小さな改善からでも始められますので、まずは「よくある電話内容を可視化する」ところから取り組んでみてはいかがでしょうか。