
公開日:
2026/3/10
最終更新:
2026/3/18
明確な評価基準がない動物病院では、院長の主観や「どんぶり勘定」で”なんとなく”給与や賞与が決まり、それがスタッフの不信感や離職を引き起こす原因となります。 人事評価は、単に給与を決める機会ではありません。スタッフのモチベーションを高め、病院と同じ方向を向いて働いてもらうための「コミュニケーションツール」です。
本記事では、動物病院特有の職種(獣医師・愛玩動物看護師・受付)に合わせた具体的な評価基準の作り方から、忙しい院長でも無理なく運用できる導入ステップまでを徹底解説します。

「あの子はよく頑張っているから給与を上げよう」という院長の頭の中だけで決まる評価は非常に危険です。 評価基準が不透明だと、スタッフは「何を頑張れば評価されるのか分からない」「院長のお気に入りしか評価されない」と感じます。この不透明感が不満や不信となり、最終的に病院を去っていくという最悪の事態を招きます。
評価制度を「減点して給与を下げるための査定」と誤解しているスタッフは少なくありません。 しかし、本来の目的は「当院がどのような人材を求めているか」を明確に示し、スタッフに自発的な成長を促すための「道しるべ」にあります。病院が目指す方向性と、スタッフ個人の目標をすり合わせるための羅針盤となるのが評価制度です。
「頑張りが正当に給与やポジションに反映される仕組み」があることは、求職者にとって非常に魅力的に映ります。 採用難が深刻化する獣医療業界において、納得感のある評価制度の構築は「辞めない組織」を作るための基盤であり、結果として強力な採用・定着戦略として機能します。
動物病院の人事評価は、バランスよく以下の3つの軸で構成するのが基本です。

病院の業績向上にどれだけ直接貢献したかを客観的な「数字」で測る基準です。
主な指標の具体例
売上高
担当患者数
指名数
手術件数
業務に必要な知識や技術が、どの程度身についているかを測る基準です。
主な指標の具体例
「一人で採血・保定ができる」
「エコー検査ができる」
「新しい検査機器の操作を習得した」
数字や技術には表れない、仕事への取り組み姿勢やチームへの貢献度を測る基準です(コンピテンシー評価とも呼ばれます)。
主な指標の具体例
挨拶などの基本的なもの
院内での協調性
後輩への指導・フォロー
病院の理念に沿った行動ができているか
職種によって求められる役割は異なります。ここでは、職種別の具体的な評価項目のサンプルを紹介します。
獣医師は売上(業績評価)で評価しやすい反面、それだけに偏ると「自分の売上さえ上がればいい」という売上至上主義に陥り、チームワークが崩れるリスクがあります。
【評価項目の例】
個人の担当売上・手術件数
飼い主様からの指名数やリピート率
若手獣医師や愛玩動物看護師への技術指導・フォロー
院内セミナーの企画・実施
直接的な売上を作りにくい動物看護師には、「スキルマップ(できることリスト)」の導入が最も効果的です。成長の階段を明確にすることで、モチベーションアップに繋がります。
【評価項目の例】
Lv1(新人): 基本的な保定ができる、院内の清掃・器具の滅菌が正確にできる
Lv2(中堅): 愛玩動物看護師として採血・投薬・カテーテル留置が一人でできる
Lv3(リーダー): 後輩の技術指導や在庫管理、シフト作成などマネジメントができる
病院の顔であり、飼い主様の満足度に直結する受付スタッフは、ホスピタリティと正確性を中心に評価します。
【評価項目の例】
笑顔での挨拶、待ち時間に対する適切なアナウンス
カルテ作成や会計時のミスの少なさ・スピード
飼い主様からのクレームへの冷静な一次対応ができるか

最初から大企業のような何十項目もある複雑な評価シートを作ると、院長もスタッフも疲弊してしまい、運用が必ず頓挫します。 まずは「3段階のスキルマップを作るだけ」「半期に1つだけ行動目標を決める」といった、スモールスタートで十分です。運用しながら少しずつ自院の形にブラッシュアップしていきましょう。
作成した評価基準やスキルマップは、必ず全スタッフが見える状態(公開)にしてください。 「ここまでできるようになれば、この等級(給与)になる」というゴールを見せることで、初めてスタッフに「納得感」と「次への意欲」が生まれます。
評価制度の成否は、書面上の点数ではなく「面談(フィードバック)」にかかっています。 半年に1回、あるいは四半期に1回、院長(または役職者)とスタッフが1対1で向き合い、「今回はここが素晴らしかった。次はここを伸ばしてほしい」と対話する時間を必ず設けてください。このコミュニケーションすることで、スタッフのモチベーション向上につながります。
多くの動物病院が評価制度の運用に失敗する最大の理由は、「面談をする時間がない」ことです。 院長が日々の診療や手術に追われ、スタッフと向き合う時間(マネジメント業務)を後回しにしてしまえば、どんなに立派な制度も機能しません。適切に運用するためにも、院長自身が、スタッフとの時間を捻出する必要があります。
院長やスタッフの時間を捻出するためには、システムの力を借りて業務効率化を図ることが不可欠です。 予約システムや問診システムなどのITツールを活用して「電話対応」や「受付業務」といった専門業務以外の一般業務を効率化しましょう。そこで生まれた時間を、スタッフへのフィードバック面談や教育指導に投資する。このサイクルを回すことが、強い組織づくりには必要です。
納得感のある評価制度は、スタッフの不満を解消し、病院全体の士気と医療の質を高める強力な武器になります。 まずは自院がスタッフに「何を求めているのか」を言語化し、スキルマップなどの簡単なものから公開していくことから始めてみてください。また、仕組み化することで、現場にコミュニケーションのための時間を作ることも大切です。
「診療時間ギリギリでの来院があり、残業が常態化している」
「電話対応やカルテ転記などの属人的な業務に時間を割いている」
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