
公開日:
2026/4/1
最終更新:
2026/6/25
獣医師として数年の経験を積むと、「このまま勤務医を続けるべきか、独立して開業するべきか」というキャリアの選択に直面する先生も多いのではないでしょうか。 本記事では、先生方が最も気になる「動物病院の勤務医と開業医のリアルな年収」を徹底比較します。さらに、それぞれの働き方のメリット・デメリットや、いざ独立を決意した際の開業手続きの注意点までをわかりやすく解説。 先生ご自身の理想のキャリアとライフプランを描くためのヒントとして、ぜひお役立てください。

「動物病院を開業することで、収入面において大きな変化が期待できる」とふわっとした考えがあるかもしれません。そこで、まずは実際に定量的な数字で「開業医の年収」と「勤務医の年収」を比較したいと思います。「実際にどれほど変化するのか」と疑問をお持ちの方はご参照ください。
すでに新規開業を考えられている方は、下記の”新規開業までの全て”を網羅した記事がございますので、ぜひご参考ください!
▶︎ 動物病院の開業・新規開業ガイド|費用・手順・準備すべきシステムまで解説
一般的な小動物臨床に携わる勤務獣医師の平均年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、おおよそ450万円〜600万円程度が主になっています。
もちろん、実績を積んで副院長や医長といった役職に就いたり、高度医療センターなどの専門施設に勤務したりすることで、年収700万円〜800万円台を目指すことも十分に可能です。
しかし、雇われの身であり、病院の売上規模や給与規定という枠組みがある以上、どうしても「収入の上限」や「上がり幅が小さい」という課題があります。ぜひ、下記の獣医師の年齢別平均年収も合わせてご参照ください。
<獣医師の年齢別平均年収>
平均年収 | 年間賞与その他特別給与額 | 平均年収 | 年間賞与その他特別給与額 | |
|---|---|---|---|---|
男 | 女 | |||
20~24歳 | 336万 | - | 324万 | 11万 |
25~29歳 | 384万 | 36万 | 360万 | 60万 |
30~34歳 | 444万 | 91万 | 384万 | 89万 |
35~39歳 | 564万 | 118万 | 432万 | 72万 |
40~44歳 | 540万 | 129万 | 588万 | 136万 |
45~49歳 | 696万 | 143万 | 492万 | 86万 |
50~54歳 | 864万 | 191万 | 504万 | 131万 |
55~59歳 | 768万 | 185万 | 336万 | 112万 |
60~64歳 | 420万 | 96万 | 336万 | 96万 |
65~69歳 | 792万 | - | - | - |
70歳~ | 480万 | - | - | - |
※平均年収=決まって支給する現金給与額(月額)×12月で算出
一方で、動物病院を開業した院長の年収は、約800万円〜2,000万円以上と非常に幅広くなります。成功すれば勤務医時代を大きく凌ぐ収入を得られますが、ここでの注意点は「病院の売上=院長の年収ではない」ということです。
一般的な動物病院の経営において、院長の手元に残る利益(手取りの年収)は「売上の約20%〜25%」と言われています。
つまり、年間3,000万円の売上を達成し、そこから医薬品の原価、医療機器のリース代、スタッフの人件費などを差し引いて、初めて約600万〜750万円の年収となります。開業医が収入を増やすには、獣医療の腕だけでなく、病院全体の売上を伸ばし、経費をコントロールする「経営力」がダイレクトに反映されます。
【具体例】年間売上(年商)5,000万円の動物病院のイメージ
年間売上:5,000万円
経費(約75〜80%):約4,000万円
・人件費(勤務医・動物看護師など):約1,500万円
・原価(医薬品・検査外注費・医療消耗品など):約1,250万円
・固定費・その他(家賃、医療機器リース代、広告費、光熱費など):約1,250万円
院長の年収(残った利益):約1,000万円両者の年収推移や変動の振れ幅は以下の通りです。やはり、開業医は勤務医に比べて、年収の推移が高く、上限としても高くなります。
比較項目 | 勤務医 | 開業医(軌道に乗った場合) |
|---|---|---|
年収の推移 | 450万〜600万円前後で安定推移 | 年商の成長に伴い800万〜2,000万円以上 |
稼ぎの上限 | 病院の給与規定による限界がある | 経営手腕次第で青天井に伸びる |
生涯年収 | 安定しているが、総額は限られる | 勤務医を圧倒的に上回る総額になる |
これだけ見れば、単純な年収の面で、開業医が有利なように思えます。次に、「勤務医のメリット・デメリット」と「開業医のメリット・デメリット」を比較しながら、それぞれにどんな違いがあるのか見てみましょう。

ここからは、実際に働いた際の「メリット・デメリット」をご説明します。勤務医は、年収の面だけ見ると良い点がないように思えますが、実は”安心”という観点では、とても有利な立場にいます。
臨床業務への集中
経営の数字や資金繰り、集患のためのマーケティングなどを気にすることなく、「目の前の動物の命を救うこと」や「獣医療の技術向上」といった”やりがい”に100%専念できる恵まれた環境です。
金銭的リスクの低さ
病院の売上が落ちた月でも、毎月安定した給料が保証されています。数千万円の借金を背負うプレッシャーがなく、また「収入がゼロになるかも...」といった心配をせずに、安定した収入が手に入ります。
オン・オフの切り替えやすさ
労働時間や休日が定められているため、プライベートの時間を確保しやすく、ワークライフバランスを保ちやすい働き方と言えます。
収入の頭打ち
病院の給与規定や評価制度に縛られるため、どれだけ自分の指名患者が増えても、一定のラインで年収が上がりづらくなる傾向があります。
診療方針の制限
病院の組織に属している以上、院長の方針に従わなければなりません。「もっと時間をかけて飼い主様と話したい」「最新のこの治療法を取り入れたい」と思っても、実現できない可能性があります。

収入面では、利点が多かった開業医どんなデメリットを抱えているのか。メリットだけではなく、デメリットも理解することで、正しい選択のヒントになるはずです。
理想の医療の追求
病院のコンセプトから、内装デザイン、導入する医療機器、スタッフの採用まで、すべてを自分の思い通りに決定し、妥協のない理想の医療を提供できます。
収入の上限がない
病院の利益がそのまま自分の収入に直結します。地域の飼い主様に選ばれる病院になればなるほど、勤務医時代とは比べ物にならないほど、高い年収を実現できます。
ゼロから作る動物病院やりがい
自分の理念に共感してくれるチーム(スタッフ)を育て、地域に根ざした医療を提供することで、飼い主様から直接感謝される病院を作った経営者としての大きな達成感がある。
莫大な初期投資と借入リスク
開業にあたり、一般的に3,000万円〜5,000万円という多額の初期投資(借入)が必要です。また、認知されて経営が軌道に乗るまでの間、赤字を耐え凌ぐリスクを背負います。
業務量の増加
獣医師としての臨床業務だけでなく、スタッフの労務管理、資金繰り、集患活動、さらには電話対応やクレーム処理といった「一般業務」」に日々追われることになります。業務の量としては、確実に勤務医時代よりも増加します。

もし、開業医としての生き方に魅力を感じ、独立を決意した場合、どのような準備が必要なのでしょうか。ここでは大まかな全体像を解説します。
約1年前から準備を始めます。「どんな病院にするか」というコンセプトを固め、診療圏調査をもとに物件を選定します。同時に、金融機関から融資を引き出すための精緻な事業計画書を作成します。
約6ヶ月前からは、日本政策金融公庫や地方銀行などへ融資の申請を行います。並行して、動物と飼い主の動線を意識した内装工事(キャットフレンドリーな待合室の分離など)の打ち合わせを進めます。
約3ヶ月前からは、必要な医療機器の搬入を行います。そして人手不足が騒がれる動物病院業界では、難易度が高い「オープニングスタッフの採用と教育」、さらには内覧会の実施など、オープンに向けた集患活動を本格化させます。
「求人を出してもこない」「人がとれない」という方は、下記の”動物病院の求人戦略”についての記事がご参考ください。
開業直後の注意点として、オープンから数ヶ月〜半年間は「赤字」になるのが一般的です。そのため、手元に十分な「運転資金」を残しておくことが重要です。また、「スタッフのマネジメント」や「予約・受付の仕組みづくり」を軽視すると、開院初日から現場が混乱し、患者離れを引き起こす原因となります。開業時から、スムーズな診療を実現する仕組みづくりがポイントとなります。
さらに詳しい開業の具体的な手順や、開業を成功に導くポイントについては、以下の開業ガイドで徹底解説しています。ぜひ、開業を検討中の方はご参考ください。
▶︎ 動物病院の開業・新規開業ガイド|費用・手順・準備すべきシステムまで解説

理想と高収入を追求する「開業医」も、どちらも獣医師として素晴らしい選択であることに変わりはありません。どちらにも優劣はないと思います。
しかし、先生ご自身の「人生において何を大切にしたいか」という価値観と照らし合わせ、納得のいく道を選択することが大切です。今回ご紹介したメリット・デメリットや年収の実情を参考に、ぜひ後悔のないキャリアプランを描いてみてください。
動物病院業界は現在、病院数が増加傾向にある一方で、飼育頭数は減少傾向にあります。この競争が激化する時代において、安定的な病院経営を実現するためには、いかに「患者様に選ばれる病院を作るか」が重要です。
これからの動物病院には、「良い立地」「綺麗な設備」「高い医療の質」だけではなく、飼い主様がストレスなく受診できる「スムーズな診療」や、安心感を生む「丁寧なコミュニケーション」が不可欠です。
少人数でのスタートとなる新規開業において、動物病院向け業務改善プラットフォーム「Wonder」は強力なパートナーになります。「予約・受付・問診・連絡」といったアナログ業務をまるっと効率化し、開業初日からスムーズな診療を実現します。Wonderでは、”集患”や”コスト削減”といった動物病院の経営に関するお悩みの相談を受け付けております。ぜひ、小さなことでもお気軽にご相談ください。
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