
公開日:
2025/12/11
最終更新:
2026/5/21
近年注目され、法改正により適用範囲が拡大し、飼い主ニーズも高まっている”動物病院のオンライン診療”。本記事では、近年注目されているオンライン診療について、院長様が判断を下すために必要な「法律の基礎」「費用」「経営メリット」を、網羅的に解説します。

オンライン診療とは、スマートフォンやパソコン、タブレットのビデオ通話機能を活用して、獣医師が遠隔から診察・指導・処方を行う診療形態のことです。単なる電話相談とは異なり、映像と音声をリアルタイムでやり取りする点が最大の特徴です。これにより、来院の負担やペットのストレス軽減しながら、どこにいても受診をすることができます。
「オンライン診療」と混同されやすいのが「オンライン相談」です。両者は言葉が似ていますが、法的な位置づけや対応できる内容が異なります。院内でどちらのメニューを設けるかによって、運用ルールや料金設定が大きく変わります。両者を混同せずに、違いを明確に理解しましょう。
項目 | オンライン診療 | オンライン相談 |
|---|---|---|
診断・処方 | 可能 | 不可 |
法的位置づけ | 診療行為 | 相談・アドバイス |
対象 | かかりつけ患者が原則 | 制限なし |
料金 | 診察料が発生 | 無料〜低額が多い |

2024年12月27日に改訂された農林水産省の指針 により、”動物病院のオンライン診療”は大きな転換期を迎えました。現在、遠隔診療を実施する上で最も重要な指針となるのが、「愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」です 。
この改訂では、愛玩動物の獣医療への迅速なアクセス向上の観点から、適切なオンライン診療の実施が促進されています 。
【遵守するべき基本原則】
基本的な実施形態: 「かかりつけの獣医師」にて行われることが基本であり、対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められます 。
獣医師の責任: オンライン診療により獣医師が行う診療行為の責任については、当該獣医師が全ての責任を負います 。
情報セキュリティ: 飼育動物の獣医療情報が漏洩や改ざんされないよう、十分な情報セキュリティ対策を講じることが求められます 。
実施の起点: オンライン診療は、飼育者がその実施を求める場合に実施されるべきものであり、獣医師側の都合のみで行ってはなりません。
Wonderのオンライン診療機能については「動物病院向けオンライン診療サービス」のページで詳しく説明しています。
動物病院のオンライン診療は、獣医療の安全性を前提とし、飼育者と相互に信頼関係を構築した上で、双方の合意に基づいて実施する必要があります 。
【2024年改訂後の初診の原則】
原則: 初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの獣医師」が行います 。
例外: 「かかりつけの獣医師」が休日夜間等で対応できないとして飼育者から依頼があった場合等には、獣医師が必要な獣医療情報を把握し、可能と判断した場合はこの限りではありません 。
【オンライン診療が適切でないケース】
ネットワークが不安定でオンライン動画が途切れる等、適切な診療が困難な場合
文字、写真あるいは、録画動画のみのやりとりで行う場合 。
急病急変への対応は、直接の対面診療が基本です。獣医師は、急病急変時に適切に対応するため、速やかにアクセスできる診療施設において直接の対面診療を行える体制を整えておく必要があります 。
獣医師は、オンライン診療が適切でないと判断した場合には、速やかに中断して対面による診療に切り替えることが求められます 。
オンライン診療後の処方薬に関するルールも、ガイドラインで明確に定められています 。獣医師は、医薬品の管理、投与方法、副作用などについて事前に十分な指導を行う等、医薬品の適正使用に努めなければなりません 。
【処方薬の取り扱いと遵守事項】
初診時の制限:
・獣医師の特別の指導を必要とする医薬品を処方してはならない 。
・安全性/有効性のエビデンスが評価されていない医薬品等を処方してはならない 。
・処方日数制限を1回7日分を限度とし、症状が改善しない場合は対面での診療を促す。
制限薬物: 安全管理が必要な医薬品を処方してはならない 。
指導の徹底: 飼育者に対して、医薬品の管理、投与方法、副作用、獣医師の指示の遵守等について事前に十分な指導を行う 。
薬の配送手続きや梱包、保管方法についても、院内で明確なオペレーションを構築し、安全かつ確実に届ける体制を整えることが必須です
2022年に日本獣医師会が発行した旧指針と、今回の2024年改訂版で何が変わった具体的なポイントをグラフでまとめました。導入を検討する際には、既存の指針ではなく、新規の指針を基づいた運用設計を行うことが必須です。
比較項目 | 2022年(旧指針) | 2024年12月(現行指針) |
|---|---|---|
策定機関 | 日本獣医師会 | 農林水産省(公的ガイドラインに格上げ) |
初診の原則 | かかりつけ獣医師のみ | かかりつけ獣医師が原則。ただし一定条件下で例外あり |
処方薬の制限 | 詳細な規定なし | 初診は1回7日分まで・安全管理が必要な医薬品は処方不可と明記 |
カルテ記載 | 記録の推奨 | 診療前相談の情報もカルテ記載を義務化 |
セキュリティ | 推奨レベル | 情報漏洩・改ざん防止対策を明示的に義務化 |

オンライン診療の導入は、以下の三つの側面から、動物病院の経営課題を解決する強力なツールです。
収益機会の創出: これまでアプローチできなかった患者層の獲得。
スタッフの業務効率化: 受付の負担軽減とコスト削減。
顧客満足度の向上: 現代の飼い主が求める利便性の提供。
オンライン診療は、従来の物理的な制約を打破し、収益機会を拡大します。
獣医師の隙間時間活用: 休診日の午後や診療の合間にオンライン枠を設定可能。新たな設備投資なしに収益を生み出せる。
集患エリアの拡大: 遠方からの専門相談やセカンドオピニオンの受け入れが可能になる。
売上高の底上げ: 時間と場所に縛られない診療形態により、病院全体の生産性が向上する。
オンライン診療システムを活用することで、受付業務を圧迫する以下の業務を効率化できます。
代替可能な業務:
簡単な経過報告や質問への回答
薬の再注文
予約の変更・確認
効果:
受付スタッフの電話応対時間が大幅に削減。
スタッフは複雑な来院患者対応や医療サポート業務に集中可能に。
スタッフのストレス軽減、定着率改善に貢献。
オンライン診療は、通院の壁を取り除き、飼い主の利便性を飛躍的に高めます。
利便性の提供:
移動の負担や、院内での感染リスクを回避。
自宅でリラックスした状態で診察を受けられる。
高評価を得やすい層:
慢性疾患の高齢動物や、待合室でのストレスが大きいペットの飼い主。
仕事で多忙な飼い主。
結果として、現代的な医療機関としての信頼性を構築し、競合の動物病院との差別化要因となります。
オンライン診療は「すべての診療」を置き換えるものではありません。主に以下のような、対面診療を補完する手段として活用されることが多いです。
再診・経過観察
慢性疾患の定期的な投薬管理
術後・治療後のフォローアップ
しつけ・栄養相談・セカンドオピニオン
通院困難な飼い主様へのサポート

導入を成功させるためには、以下のデメリットや課題を事前に認識し、適切な対策を講じることが絶対条件です。
情報不足による誤診リスク: 触診ができないことによる診断情報の不足。
コストとオペレーションの壁: 初期投資、月額コスト、スタッフの習熟にかかる時間。
誤診リスクを回避し、安全な診療を提供するためには、以下の対策が必須です。
判断基準の厳格化: 重篤な症状や緊急性のあるケースは対象外とする。対面診療への切り替え基準を明確にする。
インフォームドコンセントの徹底:
オンライン診療の限界(診断精度、対応範囲など)を丁寧に説明する。
リスクを理解し、同意を得た上で診療を開始する。
同意取得のプロセスをシステム上で記録する。
導入後の運用を軌道に乗せるためには、コストと人の側面からの課題解決が必要です。
コストの種類:
初期のシステム導入費用、月額利用料。
必要なハードウェア(カメラ、タブレットなど)の購入費用。
オペレーション定着の課題:
新しい予約方法、決済方法、処方薬配送フローなど、業務手順の見直しとマニュアル化が必要。
スタッフの習熟度が低いと、現場で混乱が生じ、サービス品質が低下するリスクがある。
予約システムと連携し、来院×オンライン診療を一元管理が可能!
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オンライン診療の導入は、以下の三段階で段階的に進めましょう。
目的の明確化: 解決したい具体的な課題(集患、離脱防止など)を定める。
ツールの選定: 目的に合った機能を持つプラットフォームを選定する。
院内体制の整備: 運用ルールとスタッフ教育を徹底する。
獣医療特有の要件を満たすツールを選ぶことが重要です。
必須要件:
セキュリティの堅牢性(個人情報保護)。
操作の簡便性(獣医師、スタッフ、飼い主にとって使いやすい)。
既存の電子カルテシステムとの連携性。
推奨機能:
処方薬の配送サポート。
予約管理・決済機能の一元化。
デモを利用し、自院のオペレーションにフィットするかを確認してください。
オンライン診療の安全性を担保するため、以下のルール策定と周知は不可欠です。
【策定すべきルール例】
対象動物・疾患の範囲(例:重症や緊急性の高いケースは対象外)
オンライン診療の受付時間
緊急時の対応手順(通信切断時、即時来院の基準)
費用・キャンセルポリシー
これらのルールはスタッフ全員で共有し、徹底させます。導入時には、ホームページや院内掲示を活用し、飼い主に対し利用方法と限界を正確に周知してください。
システムを運用するためには、以下のプロセスを通じて「人」の体制を整備する必要があります。
フローの明確化: 予約、問診票の回収、診察、会計、薬の配送指示までの流れを言語化し、マニュアル化。
スタッフ研修の実施
目的意識の共有(なぜオンライン診療が必要か)。
具体的なシステム操作手順の教育。
OJT形式での実践的な訓練。
研修を通じて、スタッフが新しい業務に自信を持って取り組めるようサポートします。
オンライン診療のより詳細な導入ステップや失敗しないシステムの選び方については、別の記事で詳しく解説しています。
→【関連記事】動物病院のオンライン診療導入ガイド!メリット・注意点と手順を徹底解説
Q. 初診の患者にオンライン診療を行うことはできますか?
農林水産省の指針では、初診からのオンライン診療は「かかりつけの獣医師」が行うことが原則とされています。再診の患者への二次診療として活用することが、一般的です。Q. オンライン診療でお薬を処方することはできますか?
可能ですが、すべての薬が対象になるわけではありません。初診時には1回7日分を限度とすること、安全管理が必要な医薬品の処方は不可とされています。Q. ガイドラインに違反した場合、どのようなリスクがありますか?
獣医師法第18条「無診察診療の禁止」に抵触するおそれがあります。具体的には、一度も対面診察を行っていない患者への処方、録画動画や写真のみでの診断などが違反に該当する可能性があります。Q. ペット保険はオンライン診療でも使えますか?
保険会社や契約内容によって異なります。オンライン診療が補償対象外となる場合もあるため、事前に飼い主様へ「ご加入の保険会社へご確認ください」と案内しておくことでトラブルを防ぐことにも繋がります。Q. 通信が途切れてしまった場合はどう対応すべきですか?
再接続が困難で十分な診察ができないと判断した場合は、オンライン診療を中断し来院を促してください。農林水産省の指針でも「ネットワークが不安定で適切な診療が困難な場合はオンライン診療を行ってはならない」と明記されています。このような対応フローを事前にマニュアル化しておくことが重要です。Q. カルテへの記録はどうすればよいですか?
オンライン診療であっても、診療内容の記録義務は対面診療と変わりません。電子カルテをお使いの場合は診療後に入力し、紙カルテの場合も同様に記録します。Q. オンライン診療の料金はどう設定すればいいですか?
一般的には通常の再診料と同額を基本とし、別途システム利用料・通信費として500〜1,000円程度を加算するケースが多く見られます。料金体系は飼い主様への案内時に明示することが大切です。本記事では、動物病院におけるオンライン診療の法規制や導入メリットについて解説しました。重要なのは、オンライン診療は対面診療を完全に置き換えるものではなく、「対面診療を補完し、飼い主様の利便性と病院の生産性を高めるためのツール」であるということです。
ガイドラインを遵守し、リスク管理を徹底すれば、オンライン診療は以下のような成果をもたらします。
商圏の拡大:遠方の飼い主様や、移動が困難なペットへのアプローチ
業務の効率化:電話対応の削減や、隙間時間の収益化
顧客満足度UP:「相談しやすい動物病院」としてのブランディング
まずは、「慢性疾患の再診のみ」「サプリメントの相談のみ」といったスモールスタートから始めてみてはいかがでしょうか。院内のオペレーションを見直し、デジタルツールを上手く活用することで、これからの時代に選ばれる動物病院作りを目指しましょう。
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