コロナ対策後に感じた来院数減少という課題。世の中の動きとして人手不足を採用という手段でカバーすることも難しくなった中、業務の仕組み改善と大きく舵取りを変えたワラビー動物病院グループ。元々抱えていた課題に対する効果だけでなく、その後起きた同病院の成長戦略について、代表の溝口院長にお話を伺いました。人手不足による対応力の低下で限界が見え始めた運営体制2023年から2024年にかけて、さまざまな改革をされたと伺っていますが、そもそもなぜ「仕組みを変える」必要があったのでしょうか?溝口様:当院は2020年頃に承継し、2~3年はコロナ対策に追われていました。診療時間短縮などにより来院数は少しずつ減少傾向にありましたが、診療単価の上昇により売上自体は維持できていました。ただ、このまま飼育頭数が減少していくと将来的に経営が不安定になると感じ、来院数そのものを見直す必要があると考えたのが改革のきっかけです。その中で、特に強く感じていた課題は何だったのでしょうか?溝口様:コロナ禍で導入した予約制や診療時間短縮によって、一定の業務効率化やスタッフのQOL向上は実現しました。しかし、診療件数が上限に達しやすく、当日来院の対応で現場が混乱するケースも増加しました。さらに、以前使用していた予約システムは柔軟性に欠けていたので、診療時間の調整が難しいという課題がありました。結果、予約数の上限で回らなくなることが多くなっていました。また、患者さまに予約システムが浸透せず電話予約が殺到して対応しきれないことも課題でした。そういった状況だと「採用によって診療枠を増やす」という選択肢もあると思うのですが、その点はいかがでしたか?溝口様:もちろん毎年採用活動はしていました。ただ、コロナの影響でリクルート活動ができず、必要な人数が確保できませんでした。その補填として結果的に「人に頼るのではなく、仕組みで改善するしかない」と考えるようになりました。人ではなく“仕組み”で変える、診療時間の最適化と柔軟な予約システムによる業務改革実際に来院数を1.5倍に伸ばされたということですが、どのような取り組みをされたのでしょうか?溝口様:取り組みについては主に2つです。1つ目は、診療時間をコロナ前の体制に戻して、物理的に受け入れられる患者数を増やしました。ただ、単純に残業時間が増えるのは避けたかったので、遅出や早帰りのシフトを導入し、残業時間はほぼ変えずに診療枠を増やす工夫をしました。2つ目は、予約システムを刷新したことです。以前使用していた予約システムでは時間枠が一律30分と固定的で、診療内容による時間調整ができませんでした。短時間で済む診療にも長い時間が割かれてしまう非効率さがあり、来院数を増やすという目的には適していないと感じました。そこで診療枠を柔軟に変更できるWonderに切り替え、15分・30分・60分と診療内容に応じた枠設定を導入しました。来院数1.5倍、オンライン予約率2倍で電話対応の大幅削減Wonderに切り替えたことで、実際にどのような効果がありましたか?溝口様:診療枠の柔軟さから、適切な予約枠設定をすることで診療時間を戻して増えた枠以外も適切に予約を入れることができ、想定以上に来院数増やすことができました。また、以前の予約システムではなかなか浸透しなかった患者さまからのオンライン予約率も、LINE予約という手軽さから患者さまへの浸透率が高く、オンライン予約率が2倍になりました。その結果、電話対応数も激減し、今では電話回線を1本減らしても問題ないレベルで受付業務を回せています。更に、LINEでのリマインド通知もあることで、予約忘れや無断キャンセルが減少し来院数増加にも影響があると感じています。最後に、どんな病院でもすぐに実践できる仕組み改革のヒントがあれば教えてください。溝口様:万能な正解はないと思います。うちも実はうまくいかなかった取り組みもありました。大切なのは、病院ごとに自分たちの課題を見極めて、小さく試していくこと。採用など人に頼ることが難しい時代だからこそ、あらゆるシステムを活かして効率化を進めるという方向は、どの病院にも当てはまるのではと思います。