動物病院の人件費率の適正目安とコントロール術

    公開日:

    2026/3/10

    最終更新:

    2026/3/18

    「売上は悪くないのに、手元に利益が残らない…」と悩む院長先生は多いです。しかし、安易に”人件費を削減すること”はスタッフの離職を招き、採用難の現代においては経営をさらに悪化させるリスクがあります。

    重要なのは、給与を下げることではなく、スタッフ一人ひとりの「生産性」を最大化することです。本記事では、動物病院における人件費率の適正ライン(目安)を解説した上で、給与水準を維持しながら利益体質へ転換するための具体的な手法をご紹介します。

    まずは現状把握!動物病院の「人件費率」適正目安とは

    動物病院経営において、最も大きな経費となるのが「人件費」です。まずは、自院の数値が業界水準と比べてどの位置にあるのか、客観的なデータを知ることから始めましょう。

    結論:適正ラインは40%前後

    一般的に、健全な動物病院経営における人件費率の目安は以下の通りです。

    レベル感

    人件費率

    備考

    黒字経営(優良)

    35%〜40%

    効率的なオペレーションで、利益がしっかり残る状態。

    標準(適正範囲)

    40%〜45%

    多くの病院がこの範囲。経営に大きな問題はないが、改善余地あり

    利益圧迫(注意)

    45%〜50%

    利益が出にくくなっている。何らかの経営改善が必要な状態。

    危険(赤字リスク)

    50%以上

    家賃や材料費を引くと、赤字になる可能性が高い。早急な対策が必要な状態。

    ただし、開業から1〜3年目の場合は、まだ固定客が定着しておらず売上が安定しないため、一時的に50%を超えることもあります。これは初期投資フェーズとして許容範囲ですが、開業5年以上で50%を超えている場合は、構造的な問題があると考えましょう。

    そもそも「人件費」には何が含まれる?

    「人件費率」を計算する際、スタッフの「手取り額」や「額面給与」だけで計算していませんか?

    正しい経営判断をするためには、以下の項目をすべて含めた「会社が負担している総額」で計算する必要があります。

    【正しい人件費の計算式】

    人件費 = 給与(残業代含む) + 賞与 + ”法定福利費” + 通勤手当 + 退職金積立

    特に見落としがちなのが「法定福利費(社会保険料の会社負担分)」です。これは給与の約15%程度に上るため、これを含めずに計算すると「うちは35%だから大丈夫だ」と誤った安心をしてしまい、実際には赤字ギリギリだったというケースが少なくありません。

    人件費が、経営を逼迫させる?2つの根本原因とは

    人件費率は以下の計算式で成り立っています。

    人件費率(%) = 人件費/売上高×100

    つまり、人件費率が高くなる原因はシンプルで、「分子(人件費)が高すぎる」か「分母(売上)が低すぎる」かのどちらかしかないと考えられます。

    1. 労働分配率の問題(スタッフ過剰・給与設定ミス)

    売上規模に対してスタッフ数が多すぎる、あるいは地域の相場とかけ離れた高待遇で採用しているケースです。

    しかし、獣医師や愛玩動物看護師の採用難が続く現在、給与を下げることは現実的ではありません。むしろ、優秀な人材を確保するためには、ある程度の高待遇は維持する必要があります。

    2. 労働生産性の低さ(売上が上がっていない)

    多くの病院は、この”労働生産性”に課題があります。

    スタッフがサボっているわけではなく、一生懸命働いているのに売上が伸びない状態です。これは、スタッフの能力不足ではなく、「診療以外の雑務(電話対応、受付、会計、清掃)」に時間を取られすぎて、本来の収益業務(診療、検査、処置)に集中できていないオペレーションに原因があります。

    受付業務などの専門業務以外の仕事を効率化し、診療などの専門業務に集中できる環境づくりができるかが鍵となります。

    給与カットはNG!目指すべきは「労働生産性」の向上には?

    「人件費率が高いから、スタッフを減らそう」
    「給与や賞与をカットしよう」

    採用難である動物病院業界において、これらの施策はおすすめしません。

    スタッフのモチベーション低下はサービスの質を下げ、患者離れを引き起こします。
    さらに離職されれば、人材紹介会社への紹介料(年収の30〜35%)や採用活動費がかかり、かえってコストが増大します。

    目指すべき正解は、「人件費(分子)はそのままに、売上(分母)を増やすこと」です。
    同じ人数、同じ給与でも、業務効率を上げて対応できる患者数や単価を増やせば、自然と人件費率は適正値まで下がります。これを「労働生産性の向上」と呼びます。

    売上に関して、詳しく知りたい人はこちらから↓

    動物病院の売上を増やすには?年商1億を突破する秘訣

    人件費率を適正化する5つの具体的アクション

    では、具体的にどのようにして生産性を上げればよいのでしょうか。給与を下げずに利益体質を作るための5つのアクションを紹介します。

    1. 愛玩動物看護師へのタスクシフト(業務分担)

    愛玩動物看護師法の施行により、看護師が実施できる業務範囲(採血、投薬、マイクロチップ装着、カテーテル採尿など)が拡大しました。

    これまで獣医師が行っていた業務を看護師に任せる(タスクシフトする)ことで、獣医師は「診断・手術・飼い主への説明」といった獣医師にしかできない業務に集中できます。これにより、病院全体の回転率が上がり、売上が向上します。

    2. 診療単価の適正化(値上げ)

    労働生産性を上げる一番の近道は、適正な単価設定です。

    例えば、同じ1時間の診療でも、単価が10%上がれば、労働時間を増やさずに売上(生産性)は10%向上します。昨今の物価高騰を背景に、適正な価格転嫁を行うことは、スタッフの給与を守るためにも不可欠な経営判断です。

    3. 従業員の稼働シフトと雇用形態の最適化

    「患者様が少ない時間帯に、スタッフが全員出勤している」という状態は、人件費のロス(手待ち時間の発生)です。

    • シフトの見直し: 過去の来院データを分析し、忙しい時間帯と暇な時間帯を可視化します。暇な時間帯は最小人数で回すシフトを組みましょう。

    • 正社員とパートのバランス: すべてを正社員で賄うのではなく、ピークタイム(午前診や夕方)に合わせてパートタイムスタッフを活用します。

    「必要な時に、必要な人数を配置する」ことで、総人件費を抑えつつ、忙しい時間帯のマンパワーを確保できます。

    4. 診療時間(開院時間)の見直し

    「朝9時から夜8時まで」のように長時間開けている病院も多いですが、その全ての時間が利益を生んでいるでしょうか?

    特に「最後の1時間」に注目してください。もし、残業代(割増賃金)を支払ってまで開けているのに、来院が1〜2件しかない場合、その時間は「開ければ開けるほど赤字」になっている可能性があります。
    思い切って診療時間を短縮し、残業代を削減することで、利益率が劇的に改善するケースは少なくありません。

    5. DXツールによる「雑務の自動化」

    最も即効性があるのが、デジタルツール(DX)の活用です。

    電話対応、予約管理、問診の聞き取りといった「専門業務以外の受付業務」をシステムに任せましょう。

    <具体例>
    
    1日合計2時間を電話対応に使っているとします。
    この時間をシステムでゼロにできれば、その2時間を診療という専門業務に割くことができます。
    結果として、診療の質が上がることも考えられます。

    このように、受付業務を効率化することで、本来の業務に集中することができ、現場のモチベーションを向上させるだけではなく、飼い主様にも喜ばれるというWin Winの環境を創り出すことができます。

    「人を増やす」前に「ツールで効率化する」方が、固定費(人件費)を上げずに生産性を高めることができます。

    まとめ:動物病院の生産性を向上させる「Wonder」

    動物病院の人件費率が高くなるのは、スタッフの給与が高いからではなく、スタッフの貴重な時間を「売上に繋がらない業務」や「待機時間」に浪費させているからです。

    「給与を下げる」という守りの姿勢ではなく、「シフトや診療時間を見直し、ツールを活用して生産性を上げる」という攻めの姿勢に転換しましょう。
    それによって、診療という”本来の業務”に集中できる環境を整え、診療の質向上や現場の負担軽減を実現します。

    動物病院業務改善プラットフォーム「Wonder」は、診療・看護以外の一般業務をまるっと効率化します。「電話が鳴り止まない」「診察券や問診の受け渡し」といった、獣医師や看護師でなくても出来る一般業務を削減し、本来の診療に集中できる時間を増加させます。

    ぜひ、本記事が皆様の手助けとなれば幸いです。

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