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「求人を出しても、まったく応募が来ない」「見学には来るけれど、採用に繋がらない」 動物病院の経営において、こうした採用の悩みは尽きません。診療で多忙な中、採用活動に時間を割くのは非常に骨が折れる業務です。
本記事では、なぜ今これほどまでに採用が難しいのか、根本的な理由をひも解きます。その上で、求職者が「ここで働きたい」と心から思う病院の特徴と、明日から取り組める具体的な対策を解説します。

動物病院の採用市場は、年々厳しさを増していると言われています。とくに採用活動が難航するケースが増えている背景には、単なる人手不足だけではなく、業界全体の構造的な変化が影響していると考えられます。まずは、なぜ求職者が集まりにくいのか、その要因を整理してみましょう。
動物病院の採用における最大の課題は、有資格者である獣医師と動物看護師の絶対数が限られている点にあります。
農林水産省の統計によれば、産業動物や公務員などを除いた「小動物診療」に従事する獣医師の数は年々増加傾向にはあるものの、それを上回るペースで動物病院(飼育動物診療施設)の数も増え続けています。
獣医師数(小動物診療):
平成26年: 15,925人
令和2年: 17,992人
飼育動物診療施設数(小動物主体):
平成26年: 10,257施設
令和2年: 11,281施設
このデータは、1施設あたりの獣医師数が不足している状態にあり、1人の獣医師を複数の病院が奪い合う状況となっています。特に、即戦力となる経験者や、専門性の高い獣医師の採用は極めて難しいです。
また動物看護師においても、愛玩動物看護師法の施行により国家資格としての地位が確立された一方で、資格取得者の数は依然として不足しており、激しい売り手市場が続いています。
かつての獣医師や動物看護師の採用といえば、出身大学の教授からの紹介や、先輩・知人などの「繋がり」をもとにした採用が主流でした。実習先の病院にそのまま就職する、という流れも一般的だったはずです。
しかし現在は、採用市場の前提が根底から変わりました。求職者はスマートフォンを片手に、全国の動物病院の求人情報をいつでもどこでも検索できる時代です。
・求人サイトで希望エリアの病院を絞り込む
・複数の病院の求人ページをブラウザのタブで同時に開く
・給与や休日などの条件を「横並び」で詳細に比較する
・AIに相談してみるこのような情報収集が当たり前に行われています。つまり、自院の求人が見られたとしても、常に「他院との比較競争」にさらされている状態なのです。ここで自院のアピール力が弱かったり、情報量が少なかったりすると、目につくことなく、スクロールされてしまいます。s
「最近の若い人は根性がない」「昔はもっと身を粉にして働いたものだ」と感じる場面もあるかもしれません。しかし、これは根性の問題ではなく、世代間における「仕事に対する価値観の変化」です。
現代の求職者、特に20代〜30代の若手層は、「仕事のやりがい」と同じくらい「プライベートと仕事の両立(ワークライフバランス)」を非常に重視しています。
一方で、動物病院の現場はどうでしょうか。 命を扱うという医療現場の性質上、どうしても以下のような事態が発生しがちです。
・アナログ業務に時間が取られ、残業が続いている
・診療業務以外のタスクに追われて本来の獣医師としての仕事が疎かになっている
・急患ではなく、診療時間終わりギリギリの来院「動物を救いたい」という高い志を持って入社したスタッフであっても、「本来の業務以外に時間が取られる」という日々が続けば、いずれ心身ともに限界が来てしまいます。
「うちはスタッフ同士の仲も良く、新人への教育も院長自ら丁寧に行っている。それなのに、なぜか求人に応募が来ない」
このように悩まれている場合、病院に魅力がないわけではありません。「その素晴らしい魅力が、求職者に全く届いていないこと」が根本的な問題です。
・求人票に給与や勤務時間といった「最低限の数字データ」しか書いていない
・院内の写真がなく、どんな人が働いているのか顔が見えない
・「アットホームな職場です」といった、どの病院でも言える定型文しかないこのような状態では、求職者は「本当に働きやすいのかな?」「ブラックな職場だったらどうしよう」という不安を解消できません。多くの求職者は、「安心感」を求めています。

では、厳しい採用競争の中で、求職者は最終的にどのような基準で働く病院を選んでいるのでしょうか。規模の大小に関わらず、求職者から選ばれる病院には共通する5つの特徴があります。
求職者が求人を見る際、最初に確認するのはやはり給与や福利厚生といった待遇面です。ここで重要なのは、単に「他院より基本給が高いかどうか」だけではありません。求職者が重視しているのは、「自分の働きが正当に評価され、透明性のあるルールで還元されるか」という点です。
残業代の適切な支給:
「みなし残業(固定残業代)」として曖昧に処理されるのではなく、タイムカード等で労働時間を管理し、発生した時間外労働に対して1分単位で正当に残業代が支払われているか。
社会保険の整備:
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の整備は、今や「選ばれる条件」ではなく「最低限のスタートライン」です。
昇給や賞与の基準:
何を頑張れば給与が上がるのか、評価の基準がブラックボックスになっていないか。
「こんなに頑張っているのに報われない」という不満は、スタッフのモチベーションにも影響します。クリアで誠実な待遇面を提示することが、求職者との信頼関係を築く第一歩となります。
”人事評価”に関する参考記事はこちら↓
スタッフが納得する動物病院の人事評価の作り方
待遇面と同じくらい、あるいはそれ以上に近年重視されているかもしれないことが「しっかりと休める環境かどうか」です。心身にゆとりを持ち、メリハリをつけて働ける労働環境は、スタッフが長く定着するために不可欠な要素です。
有給休暇の「本当の」取得率:
制度として存在するだけでなく、「先輩が率先して休んでいるか」「気兼ねなく申請できる風土があるか」といった実態が見られています。
本来の業務に集中できる:
「受付」「会計」といったアナログ業務ではなく、本来の「診療・看護」といった専門的な業務に集中できるかが、就職へのモチベーションに影響します。
ライフステージの変化への対応:
産休・育休の取得実績や、復帰後の時短勤務など、将来結婚や出産をしても働き続けられるイメージが湧く病院は、特に女性求職者から絶大な支持を集めます。
どれほど給与が高く休みが多くても、職場の人間関係がギスギスしていれば、人は定着しません。最終的な入社の決め手として最も多く挙げられるのが「人間関係の良さ」です。チーム医療を行う動物病院において、誰と働くかは極めて重要な問題です。
院長の理念と接し方:
トップである院長が、スタッフに対して威圧的ではなく、ひとりの人間として大切に接しているか。面接時の院長の態度を、求職者は非常に細かく観察しています。
職種間のリスペクト:
職業・立場に問わず、受付スタッフも含めて「全員で協力して病院を回す」という相互リスペクトの文化が根付いているか。
心理的安全性:
ミスをした時に頭ごなしに怒鳴られるのではなく、原因を一緒に考え、改善策を話し合える「風通しの良い雰囲気」があるか。
見学に訪れた際、スタッフ同士が笑顔で雑談を交わしたり、スムーズに連携したりしている姿を見れば、求職者の目には魅力的な職場に写ります。
意欲的で優秀な求職者ほど、「この病院で働けば、自分が将来どう成長できるのか」というキャリアビジョンを気にしています。「先輩の背中を見て盗め」という昔ながらの職人気質な指導は、現代の若手には敬遠されがちです。
放置しない指導体制:
忙しさを理由に新人を放置せず、特定の先輩が相談役として付くなど、体系立てて丁寧に業務を教える環境があるか。
スキルの可視化:
「1年目にはこれができるようになる」「3年目でこのオペを任せる」といった、成長のロードマップが明確に示されているか。
外部学習のサポート:
興味のある分野のセミナー参加費用の補助や、院内勉強会の定期開催など、学び続ける意欲を病院側が資金的・時間的に応援してくれるか。
「自分の成長に投資してくれる病院だ」と感じてもらうことが、質の高い人材を獲得するカギになります。
「うちの病院は何が得意で、スタッフはどんな経験が積めるのか」という、他院にはない独自の強み(特色)が明確であることも重要です。例えば、以下のようなイメージです。
診療の特色:
「整形外科の症例が豊富」「猫専用の待合室と診療枠がある」「予防医療やデンタルケアに特化している」など、病院の軸となる強みがあるか。
経験できるスピード感:
大規模なグループ病院では下積み期間が長くなりがちですが、小規模な個人病院であれば「若手のうちからどんどん経験を積める」という強力なアピールポイントになります。
地域との繋がり:
「地域の飼い主様と深く長いお付き合いができ、一次診療のジェネラリストとして幅広い経験が積める」というのも立派な強みです。
大手には大手の良さがあるように、個人病院には個人病院ならではの魅力があります。それに共感した人材が集まることで、ミスマッチのない採用が実現します。

選ばれる病院の特徴を理解した上で、実際に採用活動を前進させるために取り組むべき具体的なアクションをご紹介します。
まずは、「なぜ数ある動物病院の中から、求職者はうちを選ぶべきなのか」を、言葉にして明確に書き出してみましょう。特別な最新の医療機器がなくても全く問題ありません。
「院長との距離が近く、疑問があればすぐに質問できる環境」や、「残業が少なく、19時には全員が必ず退勤している」といった日常の当たり前も、求職者にとっては非常に魅力的な強みになります。
[具体的なアクション]
今働いているスタッフに「なぜうちの病院で働き続けてくれているの?」と直接聞いてみる
そこから得られたリアルな声をもとに、どんな人に来て欲しいか言語化する。
その人に響くメッセージを実際に言語化してみる。
(実際にスタッフに確認して、意見をもらいながら、ブラッシュアップする。)
求人サイトなどで自院の求人を見つけた求職者は、その後ほぼ確実に、検索エンジンを使って「病院の公式ホームページ」を確認しにきます。
この時、ホームページのデザインが古かったり、飼い主様向けの休診日案内しか載っていなかったりすると、求職者は「自分と合わないかもしれない」と働くイメージを持ちづらくなります。
[具体的なアクション]
「ホームページデザインが古くないか」を他の病院をもとに、比較する。
→”動物病院のホームページ制作”を徹底解説!参考記事はこちら
ホームページ内に「採用専用ページ」を作成する。
「院長のメッセージ」「求める人物像」「教育方針」などを詳細に掲載する。
→これらにより、求人票という「条件面」だけでなく、ホームページという「情緒面」の情報を充実させることが、応募への心理的ハードルを下げることにつながります。
求職者が入社前に最も恐れているのは、「思っていた職場と違った」という入社後のミスマッチです。この不安を払拭するためには、病院でのリアルな日常を包み隠さず見せることが最も効果的です。
[具体的なアクション]
採用ページの中に、「職種別の1日のタイムスケジュール」を掲載する。
「8:30 出社・清掃」「12:00〜15:00 手術・休憩」「19:00 終礼・退勤」など、できる限り具体的に書くことで、生活リズムが想像できます。
実際に働いているスタッフのインタビュー記事を写真付きで載せる
「こんな先輩たちと一緒に働くんだな」という親近感と安心感を伝えることができます。
いくら魅力的な採用サイトを作り、素晴らしい求人票を書いたとしても、実際の現場が疲弊していると、マイナス要素となってしまいます。やっとの思いで採用できたスタッフも、実態とのギャップに落胆し、すぐに離職してしまうことも...。
採用活動と並行して、あるいは採用を本格化させる前に、「今いるスタッフが無理なく働ける環境」を整えることが重要です。
[具体的なアクション]
コミュニケーションの活性化:
定期的な面談(1on1ミーティング)の実施、感謝を伝え合う文化の醸成。
労働時間の適正化:
DXツールの導入による業務効率化、予約制の徹底による残業削減。
ハラスメント対策:
相談窓口の設置や研修を実施し、誰もが安心して働ける環境を整備。

動物病院の採用難を乗り越えるためには、”求人票の書き方”といった小手先のテクニックだけでは根本的な解決になりません。求職者が本当に求めているのは、「自分にとって働きやすく、正当に評価され、やりがいを持って成長できる環境」です。
まずは自院の強みを見つめ直し、それを正しく発信すること。そして何より、現場のスタッフが笑顔で働ける環境づくりに着手することが、遠回りに見えて最も確実な採用対策となります。
「Wonder」は動物病院に特化した患者コミュニケーションクラウドです。24時間オンライン予約受付、LINE自動案内、健診・予防接種のリマインド送信などで受付業務を大幅に削減。本文でご紹介した、「受付」「会計」といったアナログ業務を自動化・効率化を実現し、本来の「診療・看護」に集中できる環境を実現します。

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