最終更新:
2026/3/11

動物病院経営において「売上の向上」と「スタッフの定着」を両立させることは、多くの院長が直面する大きな壁です。本セミナーでは、開院からわずか数年で売上を約10倍に伸ばし、かつ離職率1%以下という驚異的な組織を作り上げたサーカス動物病院の豊田陽一代表が登壇。
MBA(経営学修士)の視点から動物病院を再定義し、感覚に頼らない「科学的な経営」の真髄を語っていただきました。なぜ、あえて臨床を離れ経営に専念したのか。そして、「Wonder」が現場にどのような変革をもたらしたのか。業界の常識を鮮やかに塗り替える、豊田流・経営哲学の全貌をお届けします。
私はもともと2年半ほど臨床現場に出ていましたが、そこで感じたのは「獣医師を笑顔にする人が、この業界には圧倒的に足りない」という強い危機感でした。業界をアップデートするには、誰かが経営のプロとして組織を支える側に回らなければならない。そう考え、私は経営者への転身を決めました。
2014年に会社を設立してから2019年に「サーカス動物病院」を開院するまでの間、私にはあえて現場を離れた「空白の5年間」があります。この期間、私はMBA(経営大学院)に通い、徹底的に経営学を学びました。「どうすれば動物病院経営を科学的に成功させられるか」という戦略を練り上げるためです。現在は、私自身はメスを持たず、経営のプロフェッショナルとして、いかにスタッフが輝ける環境を作るかに全力を注いでいます。
おかげさまで当院の売上は、開院から一貫して右肩上がりを続け、次期には設立当初の約10倍に達する見込みです。ただ、私は売上そのものを「追いかけるべき数字」とは考えていません。
私にとって売上は「遅行目標」です。「どうすれば飼い主様や動物、そしてスタッフを笑顔にできるか」を突き詰めて考え、行動した結果として現れる報酬に過ぎないからです。もちろん、お金は大切です。原資があるからこそ、最新の医療機器を導入でき、スタッフを幸せにし、より多くの命を救うことができる。このポジティブな循環を生み出すことこそが、経営者の責務だと信じています。
動物病院の経営で最も怖いのは「患者様が来ないこと」だと思われがちですが、実は「来すぎてしまうこと」にこそ大きなリスクが潜んでいます。供給(スタッフの数)を超えた需要が押し寄せれば、待ち時間は増え、医療の質は下がり、スタッフは疲弊して離職してしまいます。
この「来すぎるリスク」をコントロールするために、当院では開業時からオンライン予約による「予約優先制」を徹底しています。常に予約枠の15%程度を「余白」として空けておくことで、当日の急患にも柔軟に対応しつつ、スタッフが心にゆとりを持って医療を提供できる環境を守っています。目の前の患者様を救う「短距離走」の視点も大切ですが、地域医療を10年、20年と続けるためには、経営者が「長距離走」の視点で需要を管理しなければなりません。
労働集約型の動物病院経営において、スタッフの定着は売上向上のための「一丁目一番地」です。業界平均では15〜20%と言われる離職率ですが、当院では2019年の開院以来、獣医師の退職者はゼロ、正社員の動物看護師の離職率も1%以下という数字を維持しています。
これを実現するために、私たちは徹底した「対話」を重視しています。
2週間に1回の1on1: 30分間しっかり個人の成長や悩みと向き合います。
週に1回の全体ミーティング: 2時間半という長い時間を使い、単なる事務連絡ではなく、「私たちはどうあるべきか」という価値観のすり合わせを行います。
「捨てる会議」の実施: 業務を圧迫する古いルールや不要な慣習を定期的に見直して排除することで、常にスタッフが働きやすいクリーンな状態を保っています。
病院の規模が拡大し、売上が一定のラインで落ち着き始めた際、私はさらなる成長への起爆剤として、予約システムの刷新という大きな決断を下しました。システムの移行には大きな手間がかかりますが、これからの時代に合った「飼い主様の利便性」と「現場の効率化」を両立させるには、動物病院に特化したDXが必要不可欠だと判断したのです。
「Wonder」を導入して最も良かった点は、日本人のインフラであるLINEとの強力な連携です。
飼い主様はわざわざアプリをダウンロードする必要がなく、いつものLINEから数タップで予約が完了します。この「ハードルの低さ」が来院を促進しました。また、予約前日にLINEで自動通知が届くことで、うっかり忘れによる無断キャンセルが劇的に減少したことは、経営上も非常に大きなメリットとなっています。
また、管理側の視点でも、獣医師のシフトと予約枠がスムーズに連動できるようになったことで、バックオフィス部門の工数が大幅に削減されました。
動物病院の診察は、ワクチンのように15分で終わるものから、1時間を要するセカンドオピニオンまで多岐にわたります。Wonderではこれらを診察内容ごとに細かく条件分けして予約枠に反映できるため、現場に無理な負荷がかかることがありません。
私がWonderを信頼しているのは、単なるシステムベンダーではなく「経営のパートナー」だと感じられるからです。導入病院のデータを分析し、「他院と比較してここを改善しましょう」といった具体的なアドバイスをくれたり、私たちの現場のフィードバックを即座に機能開発に繋げてくれるスピード感。この並走する姿勢こそが、導入の決め手となりました。
当院の採用倍率は5倍に達しますが、選考プロセスは極めて厳格です。一次でコミュニケーション能力を、二次で過去の行動習慣(コンピテンシー)を、そして最終で私たちの理念(MVV)への共鳴度を確認します。
これほど多くの優秀な人材が集まる理由は、SNSを通じて病院の「人格」を徹底的に可視化しているからです。InstagramやYouTubeで、スタッフの笑い声や、私が何を考えているかを包み隠さず発信することで、求職者は応募する前に「自分がここで働く姿」を明確にイメージできます。「採用の失敗は後の工程では取り返せない」という信念のもと、SNSを最大の採用ブランディングツールとして活用しています。

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